著者は元SEです。
国内の大手SIerで働いていました。
我が子は4月生まれだったので、4月頭から9月末までの約6ヶ月半、育休を取得しました。
後になって考えると、もう少し長く取りたかったと思う反面、職場の負担としてもギリギリのタイミングだったと思います。
男性の育休(育業)はありえない、いらないと言われ放題の職種ですが、果たしてSEが育休をとれるのか?という謎について、自身の経験を元に語ります。
SE(システムエンジニア)の仕事
仕事内容
業態により分かれますが、弊社の基本はプロジェクトにアサインされて、設計~リリースまで行うといった受託開発がメインでした。
属に言うウォーターフォール型ですね。
私の場合は最初の6年間は様々な企業の情報システムの開発を行い、7年目から自社サービスの提案や運用に回りました。
働き方
SEは激務の代名詞です。
結婚相手がSEの人、又は彼氏がSEの人は「仕事から帰れない」と言って約束をすっぽかされたことがあると思います。
なぜかというと、そもそもプロジェクトの受注額が決まっていて、その中で品質と納期を守らなければならないので、奇跡的にトラブルが起きなかったとしても常にカツカツです。
ひとたびトラブルが発生すると、途中からメンバーを増やす方が逆に教育に手間が掛かるので、今いる人員で何とかする(=労働時間を増やす)ことになります。
また、経費を安く抑え且つ多くの案件を受注するために、直営社員を少なくして、社外の人員を増やすことが求められるので、直営社員はますます残業に邁進します。
プロジェクトは直外比1:8以上が望ましいとされていますが、現場の過労をアテにしているとしか思えないですよね。
就活のとき「会社の実力を見るには1人あたりの売上高を見るべし」と言われましたが、
ことSIer界隈では高けりゃいいってもんじゃないです。
SEの休みの取りにくさ
休みがとりやすい仕事は何だろう?と考えると
・属人的でない
・他律的でない
・締め切りに余裕がある
などでしょうか。
まんまSEと真逆ですね!
その他にも休めない理由がこちら。
休みはプロジェクトの合間に取るもの
プロジェクトは基本的にリリースまでのスケジュールが最初から引かれているため、休んだ場合「どう巻き返すのか?」という質問がセット。
新人ならともかく、2年目以降ともなれば
「タスクと納期で自分で判断したら?」
となるので、長期の休みが取れないです。
たいてい自分が責任者
前述の直外比を達成するためには、1~2名の直営社員と、大多数の社外パートナーという人員構成となるため、穴をあけると責任者不在でどうするの?という話になります。
男性の育休取得はありえない
全体的に、育休は女性が取るものというマインドが浸透しており、男性で取得した場合、変わり者扱いは否めませんでした。
取得したとしても1~2週間程度です。
(出産支援休暇の間違いでは?)
2010年代後半に入ると、育休を取得した人がちらほら出始めましたが、それでも最長3ヶ月で、「元いたポジションには戻れないよ」という言葉が平然と言い放たれる始末。
給与はせいぜい中の上なのに、専業主婦前提の働き方、おかしいと思います!
以下周囲の実例。
ケース1
3ヶ月育休を取得した後、別のプロジェクトにアサインされる。
炎上案件の追加要員のため、いきなり激務からのスタートとなる。
育休復帰後はこのパターンが多いです。
ケース2
土日も仕事のため育児参加ゼロ。
「いい加減にしてよ!」とキレられるも、仕事の状況は一向に変わらないまま。
ある日ピタッと止まり、近頃は毎日笑顔で仕事に送り出してくれるそうです。
なぜ育休が取れないのか
プロジェクトが関係しているため休みが取りにくいのはその通りですが、育休はプロジェクトのコスト外にできるはずなので、本気で取ろうと思えば取れるはずです。
活躍の場がなくなることの恐怖
SES(システムエンジニアリングサービス)ほど露骨ではありませんが、窓際族のように稼働に空きを作ってしまうと、肩身が狭いどころか「何してんの?」と叱責される立場です。
そのため社内であっても売り込み営業が欠かせませんが、もし自分より単価が低く、技術力もある若手がいた場合、プロジェクトに採用されるのはどちらか。
このように社員同士でも競争原理が働くの、キャリアを切らすことが難しく、育休を取りにくい面があります。
男性の育休は有り得ないと言われる職場
SEは(私のいた事業部は特に)職場の8割以上が男性の男社会なので、子育てに無頓着です。
旦那さんは育休いらないでしょ?という発想
育休の取得を打診したところで「奥さん育休取ってるでしょ?」という質問から始まり、両親揃って子育てをするという意識がないため、サボリと思われる。
モーレツな働き方しか知らない
前述のとおり必死こいてプロジェクトを成功させる(顧客満足感を上げる)ことが正義であり、自分も上司も役員も、モーレツな働き方での成功体験しかないため、それ以外の価値観を認めにくい。
「仕事と家庭の両立は大事。でも仕事は手を抜かないように」という台詞が定番ですが、仕事はどんどん降ってきます。
やったこと
ようやく本題です。
ちなみに、我が家は夫婦二人東京在住。
夫実家は遠方で、妻実家は埼玉と近郊ですが、介護に追われて頼れない状況でしたので、育休の取得は必須でした。
転職する
身も蓋もない話で申し訳ないですが、この会社でワークライフバランスを追求することは諦めてしまいました。
育休を取ったところで、戻ってきても激務、昇進しても激務。
過去の上司たちが離婚したり、子どもの入学式に出れない、親の法事に行けない、など目の当たりにしてきたので、仕事の面では尊敬していますが、生活を真似したいとは思えませんでした。
転職したのは34歳。
決して前向きな理由ではありませんでしたが、新しい仕事に挑戦したくなっていたのも事実です。
結果、とある会社の情シス部門に採用されました。
SEの転職については「システムエンジニアの安定性」の記事でも紹介しています。
nagoya21.hatenablog.com
職場での立場を確保する
入社していきなり育休では、採用担当者の立つ瀬がありませんので、まずは仕事を覚えることに全力を尽くしました。
ちょうど社内では基幹系システムの再構築を行っており、その監督要員となることを見込んで採用された経緯があるため、余計にその期待を外すことは難しかったです。
1年半は真面目に働き、自身の担当のノウハウをあらかた吸収して、職場の周囲ともそれなりに良い関係性を築いていきます。
育休を取得するため理論武装する
今でこそ育休の積極的な取得が叫ばれていますが、本当に取得できるほど浸透しているかは別問題です。
実際に上司に打ち明けたところ、一言目は「その間の仕事はどうするの?」でした。
そのため「その間の仕事ならば○○のため、○○すれば私がいなくとも問題ない」ということを説明できるようにしておくことが重要です。
心の中では「それを考えるのが管理職の仕事では?」という気持ちもありますが、さすがに口に出すのは憚られます。
私の場合は、ちょうどユーザ部門のテストフェーズに差し掛かり、主要なインタフェースの確認はほぼ終了して、残すところは数値検証メインの状態だったため、業者との橋渡しをうまくやれば情シスの出番は少なかったことがあります。
逆にトラブったときは、代案の検討、業者の指示、ユーザ部門の説得など業務は多岐にわたりますが、蓋を開けてみれば、業者の開発遅延により巻き返しの作業期間に当てられたため、情シスの出番はほとんどなかったです。
育休を終えて
育休を終えて職場に戻ると、開発スケジュールが後ろ倒しになっただけで、何も代わり映えしませんでした。
そのため、育休前と状況が概ね変わらず、ブランクも何もなく済んだのは幸いでした。
しかし10月に復帰後、遅れを取り戻すように業務過多となったため、私が不在のままでは回らなかった可能性もあります。
次の育休取得
次は第2子を予定していますが、妻の実家に頼れないため、育休を1年取ろうと考えています。
核家族世帯で二人育てるには、専業主婦家庭であっても、男性の育休は必須だと思います。
「育児・介護休業法」の改正により男性の育休取得が身近になったので、個人的には追い風ですが、上司の説得と職場の人間関係は避けて通れないため、やはり入念な準備は必要と思います。
SEの夫・旦那に育休をとって欲しい場合
私は転職しましたが、育休を取るだけなら、腹を括ればハードルは高くないと思います。
腹を括るのに障壁があるとすれば「第一人者でなければならない」「仕事を投げ出さない」という強迫観念やプライドです。
これは新入社員の頃から叩き込まれるカルチャーなので、決して本人だけの問題でもないですが。
だからこそ、皆が育休を取るようになれば、会社が身の丈以上の案件を取れなくなり、結果的に皆が幸せになると思いますね。
事あるごとにケチをつけて減額を要求する某社や某大学のような輩は、プロとしての仕事を捧げるに値しないので、決別することで業界的にもプラスです。
それに、共働き推奨の世の中、妻が仕事を諦めないようにする方がよっぽど健全です。
というように誰にとってもWIN-WINな話なので、しばらくSIerの現場から離れてもらうように
「いやー、カミさんが最低1年育休取れって言うんで」という言い訳の一助になってあげてください。
おわりに
男性が育休を取得するのはまだまだハードルが高いですが、妻一人に任せきりにすることは生死に直結することだと思って、ぜひ積極的に取得してください。
母子ともに健康で、妻の実家で里帰り出産するなど手厚いサポートがあって、ようやくギリギリ育児ができるレベルです。
もしそうではなく、健康に不安があったり、核家族世帯で、又は夫の実家で子育てをするならば、夜泣きが収まるまでの最低半年は育休を取らないと、産後うつの危険性が跳ね上がると思います。
我が家でも、次の育休時は上の子がまだイヤイヤ期なので、もし自分がワンオペで2人を育てるとなったら噴死ものです!
これから育休を取得しようと考えている方は、もし上司から懐疑的にみられても、生死にかかわることだと切実に訴えて、何としても育休を勝ち取ってくださいね。
証拠集め
私は使わず仕舞いでしたが、パタハラに悩む友人は無理やり育休に入ったので、いざという時のためICレコーダーでやりとりを録音していました。
理解のない職場での育休取得は、コンプラ違反の証拠集めから始まります!
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